アレルギー除去食ができる保育園は意外と少ないって知っていますか?

給食室の仕事

近年、食物アレルギー児が増えつつあります。私が勤務する園でも年に1~3名程度は卵や乳のアレルギーを持った子が入園します。

ちょっと重めなアレルギーを持つ保護者さんからは「除去食やってないの?」と疑問を投げかけられるのですが、保育園側にも「アレルギー食を作ることができない事情」があるのです。

アレルギー対応ができる園の条件

多くの保育所では、アレルギー食の対応ができる設備はないです。

というのも、アレルギー食を対応するためにそれなりの設備を要するからです。少なくとも、以下の条件がそろっていない施設ではアレルギー対応食を提供することはできません。

  • アレルギー食専用の調理・洗浄スペース(個室)
  • アレルギー食専門で作る調理員(この人は他の作業はできない)
  • アレルギー食専用の調理器具や食器が用意されている

アレルギー児にアレルギー対応食を安全に提供するためには給食室内だけでも、以上の設備が必要となります。

アレルギー児給食対応の方法は3つ!

除去食:アレルゲンを除去した給食の提供
代替食:アレルゲンを除去した代わりの栄養を補うための代替品の提供
お弁当対応:自宅からお弁当を持ってきてもらう

除去食での対応

食物アレルギーの重症度とは関係なく、一律で対象のアレルゲンをのぞいた献立での給食提供となります。

この場合は、アレルギー食専用の調理場が設けられ、専用の調理員、専用の調理器具・食器なども用意されます。

加工品(ハムや練り製品他)などに含まれるアレルゲンも除去を行う必要がありますので、アレルゲンを使用されていない加工品を探すか、加工品そのものは使用しない給食提供をしなければならなくなります。

しかし、多くの保育所では残念ながら専用の調理場や器具、人員などの確保が難しいため、部分除去食を行っているところも少なくないと思います。

ただし、全園児(アレルギー児以外含む)が「アレルゲン除去食給食」を食べる前提で運営している保育園であれば、この方法でもアレルギー児の受け入れは可能です。

部分除去食とは

主に軽度のアレルギー児を対象とする提供の仕方です。
今回は卵アレルギーを例に書いていきます。

  • A君は卵アレルギーと診断されています。しかし、ハンバーグや練り物のつなぎ程度であれば問題なく食べることができます。医師の診断により、全卵の1/2個までは摂取可能とされています。
  • B君もA君同様卵アレルギーです。卵そのものの摂取も難しいが、ハンバーグや練り物のつなぎでも症状が出ます。
  • C君も卵アレルギーです。ハンバーグや練り物のつなぎは問題なく食べることができます。この子はプリンも食べることができます。しかし、卵アレルギーということで生活管理指導表の提出がされています。

卵アレルギー児は上記の3名がいるとします。三者三様ですね。
この3名の中では、A君とC君が部分除去食の対象となります。部分除去食となる日は、

  • 「卵」そのものを保育園で割卵して使用する日(卵焼き・親子煮・プリンなど)どのくらいアレルゲンが入ってしまうかはっきりしない日

となります。

部分除去食の日は、専用調理室と調理員がいる保育所では「除去食」の提供をしてもらうことができます。しかし専用の設備がない園では、部分除去が必要なの日に関しては、お弁当持参での登園をお願いされます。

しかし、C君に関しては「プリンは食べることができる」とされていますが、「卵1/2個分は可」とはされていません。これではどのくらいの大きさのプリンまでは摂取可なのかまでははっきりとはわかりません。ですので、このケースではC君に関しても「プリン可」であっても提供はしてもらえません。

そして、B君に関しては「重度の卵アレルギー」であることがわかりますので、専用調理室と調理員が常駐する園でない限り給食提供はできないことになります。この場合は、お弁当持参で登園することになります。

代替食での対応

  • 牛乳 → 豆乳(乳アレルギー)
  • パン →米粉パン(小麦アレルギー)
  • プリン→ゼリー(卵アレルギー)

のように、アレルゲンを除いたものと差し替えての提供のことを言います。アレルギー食専用の調理場がない園でも提供可能ですが、取違えやアレルゲンの付着を防ぐために「個包装の市販品」での対応となることが多いです。

お弁当対応

アレルギー児の保護者にお弁当を作ってもらい、持参して登園してもらうことを指します。(上記の例のB君のケースです。)

アレルギー専用の給食設備がない保育園で「重度のアレルギー児」をお預かりするときの対応となります。

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現実的にはひとりひとりのアレルギー対応することは困難

園児の定員数が数百という大きな保育所であれば、アレルギー食に対応したつくりの給食室を設けることもできるかもしれません。しかしながら、200人弱の比較的小さな保育所では、年間のアレルギー児もいるかいないかくらいであることも多く、独立したアレルギー食専用の調理場を作るメリットもありません。

部分除去食での対応も、個人個人のレベルに合わせた対応は、万一の誤食につながる恐れもあることから、提供するにはある程度の線引きがなされます。(上記の例でいうならば卵1/2個以上食べることができることが最低条件です)

では、アレルギー児は保育所に入園できないのか?

アレルギーを持っているお子さんも保育所に入園することができます。

ただ、各園によって対応の違いはありますので、必ず見学して園長先生と話をしたうえで、キチン理解して入園を検討することをお勧めします。

さいごに

今回は少しまじめなアレルギー食に関する記事を書いてみました。

保育所は0~5歳児の乳幼児をお預かりする施設であるため、「子どもの食に関すること」は必要以上に配慮される必要があります。

口から食物を摂取するのですから「命に関わる」こともあります。特に乳幼児の食物アレルギーは発症してしまうと重症化するケースもあるため、「事故を未然に防ぐ」ためにいろいろな制約を設けさせてもらっています。

「このくらいなら食べさせても大丈夫なんだけどな…」
「お弁当なんて面倒くさいから、症状が出ても給食提供してほしいな。」

という無茶なことを言う人も稀にはいますが、アレルゲンの摂取は医師の指導の下ぜひご自宅で行っていただき、一日も早くアレルギーを克服させるように練習をしていってもらいたいと思います。(特に乳児期のアレルギーは、年齢とともに改善されます。)

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