集団給食の「検食の実施」と「検食の保存」とは?【給食提供時の事故を防ぐために】

給食室はこんなところ

大量調理を行っている施設においては 必ず「検食の実施」と「検食の保存」を行うことが義務づけられています。今回は、「検食の実施と、検食の保存」について解説していきたいと思います。

給食の「検食」とは

一度に多くの人が口にする食事を作ることになる給食施設では、必ず「検食」というものが行われます。

検食とは、その日に提供する予定の給に異常がないかどうかというのを実際に食してもらって確かめてもらうことを指します。

  • 味・臭い
  • 固さ
  • 異物混入がないか

などを施設の代表者が行います。

検食を実施する人は誰なのか?

施設によって異なりますが、

  • 病院では調理場を仕切っている「栄養士」
  • 学校であれば「校長先生または教頭先生」
  • 保育園であれば「園長や主任」

であることが多く、私の勤務先の保育園でも、「責任ある立場の人が継続的に検食を行うこと」という決まり(自治体からの指導です)にのっとって園長先生か主任の先生に検食をしてもらっています。

検食を行うタイミングは?

検食を行うタイミングは、「給食提供の30分前までに」という決まりがあります。これは、万一給食に異常があった場合に、給食の提供することを止めることができるためなのです。

異常が確認された給食を早い段階で知ることによって、それが多数の口に入ることを阻止することができ、集団食中毒の回避や異物混入によるケガや事故を未然に防ぐことも可能となります。

検食の量は?

検食の量は、「一食分」です。検食では量が適正かどうかも見るため、必ず一食分の提供をします。

そのため、検食をする職員は、通常の給食より30分以上早くに食事を兼ねて検食をすることになります。

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集団給食を提供する施設においては職員全員が給食を食べることができない?

給食を作っている施設では、全員がその日の給食を食べることができません

少なくとも半数の人は各自で用意したお弁当を食べることになります。(交代で給食の日とお弁当の日となる場合もあります。)

これは、万一食中毒を出してしまった場合に、原因となる食事や原材料を特定しやすくするためなのです。

全員が同じものを食べているより、別々のものを食べていることで「いつ作ったどのおかずが原因なのか」という絞り込みがしやすくなるのです。

集団給食は提供先(病院の患者、学校の生徒・教職員、保育園の園児・職員)の人たちは、みんな同じ給食を食べています。同じものを食べているために、万一の時に「いつの何が原因」かの特定までに時間がかかってしまうこともあります。

ですので、作っている職員の半数が別のものを食べることで、「何日の給食が原因ではないか?」ということが推測しやすくなるのです。

もちろん、半数の人は同じ食中毒の症状が出ている可能性があるので、勤務もできなくなってしまうのですが、残りの半数は稼働することができるということもあります。

食中毒の症状が出ていない人たちで原因の究明を行うことも可能になるのです。

万一食中毒を起こしてしまった場合は、速やかに保健所に届け出て調査をしてもらうことも大切です。そのために必要なものは「検食の保存食」となります。

給食施設の「検食の保存」とは?

集団給食を提供する施設では、「検食の保存食」(以下保存食)を残しておくという決まりがあります。

保存食とは何をとっておくの?

  • 洗浄前の原材料
  • 提供時の給食

を、とっておく必要があります。

洗浄前の原材料は、文字通り洗う前の野菜などのことを指します。大根やニンジンなども一部を皮つきで残しておくのです。もちろん葉物野菜もです。原材料ごとに清潔な袋に入れ、しっかち口を縛ってお互いが混ざらないようにして保存します。

提供時の給食は、各おかずごとに清潔な袋に入れて口をしっかり縛って、保存します。

保存食の量は、各50g以上と決まっており、原材料と出来上がりの分と合わせるとそれなりの量になってしまうので、食材を発注するときはこの分も加味して発注することが求められます。(食材は素手で触らないようにします。)

保存食の保存方法は?

完全に密封して-20℃以下の冷凍庫での保存を行います。

日にちごとにタッパーや専用の袋に入れて、保存食の専用冷凍庫へ入れることが望ましいです。(普段仕様の冷凍庫ですと、庫内温度の変化が大きくなりがちのため。)

保存食を保存しておく期間は?

保存食は2週間以上の保存と決められています。これは、食中毒菌の中にも、潜伏期間が10日前後と長いものもあるためです。

採取年月日がしっかりわかるように記入し、誰でもわかるように整頓して保管すると良いでしょう。

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さいごに

今回、書いてきたことは大量調理を行う施設では、日常的におこなわれていることです。

2021年6月から義務化となったHACCPでは、「検食」については特に触れられてはいません。これは、HACCPという制度が「商品を安全に提供するための衛生管理方法」であることに関係しているかもしれませんね。

検食とは、万一の事故(食中毒や異物混入)があった場合に原因を特定するために使用する「検体」であるので、意味合いが少し違うのかもしれませんが、個人的には「取っておいても損はないもの」と思っています。

万一の際に原因が特定できるということもありますが、逆を言うなら「潔白を証明できるかもしれない材料」でもあるからです。

別に原因があったとしても、多くの人が同じ給食を食べていたとするならば真っ先に疑われるのはその食事を提供していた施設となります。そうなった場合、たとえ潔白だったとしても、細かな調査が入ることは避けられません。その場合検食の保存があることでは、うちで提供した食事は安全なものでした!!と自信を持って証明できる材料ともなるのです。

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